犠牲にするものもある

税理士試験は、何かの犠牲なしには受験することができないものです。それは、絶対的な事実です。

私の場合は仕事をしており、かつ家族がいましたので、それらとの両立が必要でした。自分が両立することができていたかどうかは、正直言ってわかりません。仕事と家庭のどちらも犠牲にしていたのかもしれません。

仕事を犠牲にすると、職場で評価が下がり、給料も下がるかもしれません。また、家庭を犠牲にすると、最悪の場合家庭崩壊につながるかもしれません。

しかし、それを言っていると、きりがありません。ここは、なぜ税理士試験を受けようとしているのかを、もう一度考えてみましょう。

なぜ、仕事や家庭を少し犠牲にしてまで、勉強をしているのか。

  • 税理士試験に合格して、税理士として活躍したい。世の中に認められたい
  • 経済的にも精神的にも豊かになり、家族を幸せにしたい

などの目標を持っている方も多いのではないでしょうか?

そのような大きな目標を達成するためには、いま仕事や家庭が少し犠牲になるのは仕方がないと思うのです。

それよりも、いま頑張って勉強をし、1年でも早く合格することです。

合格したあとにその知識をフル活用して仕事に活かし、いまの会社に恩返しをしてください。また、経済的・精神的に豊かになることで家族をより幸せにしてください。

各科目の合格率と難易度

税理士試験の合格率は、各科目だいたい10~20%となっています。会計科目(簿記論、財務諦表論)は平成15年度に20%前後となり(平成16年度の簿記論の合格率は低かったですが)、税法科目はだいたい10~15%くらいとなっています。つまり、税理士試験は、受験者100人に対し、15人程度しか受からない試験です。

合格率だけ見ると、非常に難関な試験のように感じてしまいます。

よく、「模擬試験で常に上位10%に入っていないと、合格はおぽつかない」などと言われることもあります。

さて、本当に、そうなのでしょうか?

私は違うと思います。あなたの実質的な合格率は、だいたい40~50%くらいではないでしょうか。

なぜ、こんなことが言えるのでしょうか? 実証してみましょう。

例えば、税法で合格率10%の試験があったとします。100人受ければ、10人が合格する計算ですね。ところが、この100人の中には「はじめから勝負になっていない受験者」が40人ほどいると考えられます。

目標設定をして「逆算思考」

ここからは、税理士試験に合格するための「発想」「考え方」「心構え」について述べていきたいと思います。

税理士試験の勉強をするにあたって特に重要なのは、「目標を掲げ、その達成のための計画を立て、その計画を実行していくこと」です。つまり、「逆算思考」です。

税理士試験を受ける方は、当然ですが合格を目指していると思います。そこで、まずは合格のイメージを頭の中に置き、合格するためには何をやっていけばよいかを考えるのです。

「そんなのは当たり前のこと」と言われる方もいらっしゃると思います。そのとおりです。当たり前のことなのです。しかし、その当たり前のことをやっていくのは、結構難しいのです。

当たり前のことを当たり前にできる人は、受験生の中でも少ないのです。だからこそ、その当たり前のことができれば、確実に合格に近づけます。

1年に受験する科目数は?

税理士試験は、5科目に合格する必要があります。1年に5科目受験する方もまれにいらっしゃるようですが、5科目一度に合格する方は、残念ながら、ここ10年ほど出ていないそうです。

では、1年に受験する科目数はいくつにすればいいでしょうか?

受験専念組は2科目か3科目、会社員など「働きながら組」は1科目というのが相場となっているようです。しかし私は、世間相場に惑わされることなく、「働きながら組」でも、なるべく複数科目を受験することをお勧めします。

私か複数科目の受験をお勧めする理由は、次のとおりです。

  1. 2科目受験により、学習の相乗効果が発揮される場合がある
  2. 1科目失敗しても、1科目受かっていれば救われる
  3. 早期合格の可能性が高まる
  4. 勉強のメリハリをつけることができる
  5. 単純に計算上の合格率が上がる
  6. 結局、勉強の密度はそれほど変わらない

2つの考え方

税理士試験は、会計科目(簿記論と財務諸表論)と税法科目(税金に関する法律)に分かれています。

税法科目では、法人税法か所得税法のどちらかは、必ず合格しなければなりません。その他の税法(相続税法、消費税法、洒税法、固定資産税、住民税、事業税、国税徴収法)については、どれを選んでもいいことになっています(ただし、消費税法と洒税法および、住民税と事業税は、両方を選択することができません)。

ここで、税法の科目選択が重要になってきます。

税法の科目選択については、2つの考え方があります。

ひとつは、【実務に必要な科目を選択する方法】です。もうひとつは、「合格しやすい、もしくは(学習量の)ボリュームの少ない科目(例えば授業が週1回の科目)を選択する方法」です。

ここで考えていただきたいのですが、「合格しやすい」科目と「ボリュームの少ない」科目は、一致するのでしょうか?

私は一致しないと考えています。

専門学校のメリット

受験生の方によく聞かれることがあります。「学校に行くのと通信と独学、どれがいいでしょうか?」

あえて言いますと、専門学校に通うのがいいことは明らかです。

税理士の専門学校に通うメリットには、次のようなものがあります。

  1. 情報がリアルタイムにキャッチできる
  2. 他の受験生と接することで刺激になる
  3. 授業に集中できる
  4. 模擬試験などを本番に近い形で受けることができる

順番に見ていきましょう。

まず、①「情報がリアルタイムにキャッチできる」ですが、税理士試験において、情報というものはとても大切です。専門学校では、これを先生からリアルタイムで聞くことができます。

そして、授業終了後、個別に質問をしたり、勉強方法などについて、相談をしたりすることもできます。

また、受験生同士の情報は、怪しいものもたくさんありますが、信頼できる情報も飛び交っています。私も受験未経験のときは、経験者に受験の”ポントのところ”をいろいろと質問していました。結果的に、それがものすごく役立ちました。

そのような情報をキャッチできることは、専門学校に通うメリットになります。

次に、②「他の受験生と接することで刺激になる」ですが、①で説明したように、やはり情報を共有できる仲間ができるということと、まわりに頑張っている受験生かいることで、「負けるものか。みんな頑張っている。自分もやらなきや」と刺激を受けることができます。この刺激というものは、とても重要です。

続いて、③「授業に集中できる」です。やはり教室で先生が直接、自分のほうを見てしゃべっているほうが集中できます。私も通信講座(カセットテープ)やWEB(インターネット)講座を試しましたが、どうしても授業に集中できませんでした。

通信教育は、いくらでもサボれるところがデメリットです。授業を聞いていても、「今日はここまで。明日続きをやろう」ということになり、テープや教材がどんどんたまってきます。そうなると悪循環に陥り、勉強することが億劫になってしまうのです。

④の「模擬試験などを本番に近い形で受けることができる」も非常に重要です。

税理士試験では、本番でいかに平静さを保つかが、とても重要な要素を占めます。ですから、あらかじめ本番を想定しながら模擬試験などを受けることがとても役に立つのです。

誰もが直面する問題

税理士試験を受験する人には、「学費をどうするか」という問題が必ず発生します。私も、毎年数十万円の出賞は本当に痛かったです。乳飲み子がいたので、なおさらでした。

受験の専門学校に行くのが合格への最短距離なのですが、それ相当の学賞がやはりかかってきます。これをどう工面するかが重要な問題となります。

そこで私は、あらゆる手段を使って学賞を安く抑えることに努めました。まず使ったのは、「教育訓練給付制度」です。これは、雇用保険加入期間が3年以上などの一定の条件を満たしている場合、資格試験取得のための費用などが数十%返ってくる制度です。

詳しくは、次の厚生労働省のアドレスなどを参考にしてください。
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/anteikyoku/kyouiku/

.また、各専門学校の割引制度を使う手もあります。

例えば、「簿記論」と「財務諸表論」を同時に受けた場合、「簿財パック」などといって、かなりお安くなる場合があります。また、それ以外にも私の知るかぎり、次のような割引制度がありました。

  • 2科目以上同時に申し込んだ場合
  • 8月末までに申し込んだ場合
  • 専門学校指定の書店などで申し込んだ場合

「仕事が忙しくて」と言う知り合い

反論のある方もいらっしゃるかもしれませんが、ここではあえて書きたいと思います。

知り合いで税理士試験を受けている人に、「今年は受けるのですか?」と聞いてみると、こういう答えが返ってくることが多いです。

「今年は忙しいから、受験しない」

また、[今年は仕事が忙しいから、ちょっと介格は難しいな]と言う方も何人かいらっしゃいました。

私は不思議でなりませんでした。この人たちは、税理士になりたくて勉強をしているのだろうか? それとも、別に税理士にならなくてもいいのだろうか?

それなら、どうして税理士試験を受けるのですか? と聞きたくなります(実際に聞くと気まずくなるので聞きませんが)。

税理士試験を受けるのなら、まず「合格する」ことを念頭に置くべきです。

もちろん、人によって置かれている状況はかなり違います。順調に受験をすることができた私は、恵まれていたと言えます。

しかし、「合格」を目標にし、そこにたどり着くには、何をいつまでにやらなければいけないかということを、常日頃から考えておかなければなりません。

そこで、仕事が忙しくてどうしても勉強の時間が取れない場合は、なんとか仕事が忙しくならないように工夫するべきなのです。

仕事が忙しい人は、なんとか工夫して、週一回でも早く帰ることができるように頑張ってください。タラタラと残業をするのは簡単です。「今日は5時に帰るぞ!」と決めておけば、仕事にも緊張感が持てるはずです。

「覚悟」はできていますか?

税理士試験に合格するためには、合格率10~20%の難関科目を5つくぐり抜けていかなければなりません。はっきり言って、生半可な気持ちでは合格することができません。

これからの数年間、税理士試験合格を第一に念頭に置いて生活しなければなりません。ときには「無理」をしなければならないこともあります。これまでにしていたことの一部の時間を、自分から奪うことになります。什事にも家族にも、影響を及ぼす可能性があります。

さて、あなたは、その「覚悟」ができているでしょうか? その覚悟ができている方は、この本を読み進めていただいて結構です。

覚悟ができていない方は、もう一度考えてみましょう。しっかり考えてみて、やはり税理士試験を受ける決意をした方は、このあとを読み進めてください。きっと何か見つけられるものがあるはずです。

覚悟ができた方へ

税理士試験に合格しようという覚悟を決めた方に改めて、ここで質問があります。

あなたは、なぜ税理士試験を受けようと思われたのでしょうか?

その答えを、私なりにいくつか列挙してみましょう。

  • 自分の力で独立して仕事をしたいから
  • 税理士という職業に憧れているから
  • 会社内でのスキルアップ
  • リストラにあってしまったから、仕方なく
  • 会社内での将来の姿が見えてきてしまったから

他にもさまざまな理由があると思います。

どの理由がよくて、どの理由なら悪いということを言うつもりはありません。私か言いたいのは、「受験の動機を常にはっきりさせておいてください」ということです。

最初に受験の動機をはっきりさせておくことは、非常に大切なことです。

税理士試験をまだ受けていない方も、すでに受けている方も、この本をいったん閉じ、ノートや手帳に受験の動機を書き出しておいてください。あとで必ず活きてきます。